論文メモ:M. Humphries 2020, The Memory of Mursa
M. Humphries, "The Memory of Mursa: Usurpation, Civil War, and Contested Legitimacy under the Sons of Constantine", in: Baker-Brian, N., & Tougher, S. (Eds.). (2020). The Sons of Constantine, AD 337-361. Cham, pp. 157-183.
コンスタンティヌスの息子達の治世はその当初から権力闘争・正統性の争いに満ちていた。内乱は帝国の統一性を危機に晒したのみならず、その息子達の支配の正統性が問われていたことをも意味する。本章はコンスタンティウス2世とマグネンティウスのあいだで350-353年に戦われた内戦と関連エピソードに注目、その反乱が帝国の統一に対する理念的挑戦でもあったこと、そして正統性のプロパガンダ行為に対する西側の貴族の対応、そしてコンスタンティウス勝利後の政治的・理念的統一の再構築の過程を論じていく。そして最後の節で、コンスタンティウス側から提示された解釈がその後主流とはならなかった理由を、アンミアヌスの叙述を対象に分析する。