周藤芳幸『ナイル世界のヘレニズム:エジプトとギリシアの遭遇』

ナイル世界のヘレニズム―エジプトとギリシアの遭遇―

ナイル世界のヘレニズム―エジプトとギリシアの遭遇―

書籍の内容・目次については名古屋大学出版会のHPを参照。
http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0785-6.html

大著といってよいと思う。全20章(序・終・補論含む)のうち、計9章(5・8・補・10・11・12・15・16・17)が既出論文をもとにしているので、半分以上は書き下ろしである。しかも、既出論文のうち4つは英語論文であり、日本語に改稿するにあたってかなり修正したとのこと(あとがき参照)。全体としては書き下ろしに近い、というのも納得。

タイトルの通り、本書が扱うのはいわゆる「ヘレニズム時代」、紀元前最後の300年間が中心になっているようである。とはいえ、例えば「補論 ローマ帝政期の軍団と採石場」はローマ帝政期(ドミティアヌス帝支配期)を扱っているし、アレクサンドリアを扱った第2部(第4〜6章)は、古代を通じてこの都市が持った重要性を考えると、ローマ史家にとっても重要だと思う。