『ローマ皇帝群像』

南川高志、桑山由文、井上文則「『ローマ皇帝群像』解題」井上文則(訳・解題)、南川高志、桑山由文(解題)『ローマ皇帝群像』(4)(京都大学学術出版会, 2014年)251‐321頁。

ローマ皇帝群像4 (西洋古典叢書)

ローマ皇帝群像4 (西洋古典叢書)

 第一分冊の刊行が2004年なので、それから10年で完結、ということに。第四分冊には解題が付されることもあり、待望でした。古代末期の数ある史書のなかでも、これほど論争と成果が積み重ねられてきた史料も珍しいように思う。
 解題は以下の構成。
・はじめに
・一 『ローマ皇帝群像』の構成、テクスト、写本
・二 『ローマ皇帝群像』の成立年代
・三 『ローマ皇帝群像』の著者と著述目的
・四 『ローマ皇帝群像』の原史料
・五 『ローマ皇帝群像』の史料的、文学的価値
・おわりに

「二」と「三」で扱われるトピックが、おそらく学界で最も激しい論争の対象だろう。成立年代については、現在の通説は四世紀末、とりわけ390年代後半ということになる。主な根拠は、四世紀末の出来事・状況の反映、そして四世紀末執筆であることが明らかな他の史書からの影響がこの史書に見られることである。ただし、それを否定して380年代の成立と見る学説も2011年に発表されている。著者と著述目的については一層多様な学説があり、通説など存在しないと言ってよい状態のようである。

ところで、西洋古典叢書の「月報」は、いつか何かの形にまとまるのかな?『ローマ皇帝群像』が皇帝たちの興味深いエピソードに溢れているように、「月報」も貴重な談話集、として読めるように思うのですが。