帝国の滅亡とアッティラ

今日届いた本を一冊。

The End of Empire: Attila the Hun and the Fall of Rome

The End of Empire: Attila the Hun and the Fall of Rome

クリストファー=ケリー著『帝国の滅亡 フン族の王アッティラとローマの没落』とでも訳したらいいんでしょうかね。


著者のクリストファー=ケリーは2004年に『後期ローマ帝国の支配』を出版しており、後期ローマ帝国官僚制研究の気鋭という印象があります。

Ruling the Later Roman Empire (Revealing Antiquity)

Ruling the Later Roman Empire (Revealing Antiquity)

この本では、後期ローマ帝国官僚制の退廃の象徴とされ、また時にローマ帝国没落の一因ともされてきた官僚の汚職について研究しています。官僚の汚職というと、日本でもずっと言われてきているように「政治とカネ」の問題であって、非常にネガティブな印象を持つ人が多いと思います。しかし、そうした近代的価値観で後期ローマ帝国官僚制を表現するのではなく、「金とコネ」が実際どのように後期ローマ帝国で機能していたか、当時の価値観で判定してみよう、というのが目的です。考察の結果としては、官僚が時に要求する手数料や報酬といった本来不法であるはずの金は、官僚にしてみれば自らの職務に対する当然の見返りであって、むしろそれを認めない政府が批判されてしかるべきだった。そうして稼いだ金を用いて、官僚たちはさらなる出世を目指していった…というのが本書の話の一部だったと思います。(僕の読みが正しければ)


で、今回届いた著作は官僚制研究ではまったくなく、410年にローマを陥落させたフン族の王アッティラについての本です。ちょっと拍子抜けしたのは、本文に註がなく、また各章の見出しも"How the West Was Won"とか、"Mission Impossible"などとかなりキャッチーなことです(笑)両方有名な映画のタイトルなのですよね。僕にとっては前者はむしろLed Zeppelinのアルバムのタイトルですが。思い出の一枚です。それから、序章の扉にコンスタンティン=カヴァフィの詩の一節が引用されていたり。


ぱっと手にとってめくってみたり、裏表紙を眺めてみたりした印象では、やはり一般向けの教養書、という性格なのかもしれません。が、クリストファー=ケリーのことですから、間違いなく一次史料と豊富な研究に裏付けられた著作でしょう。時間のある時に読み進めたいと思います。