『アグリッパ』

今日も今日とてラテン語と格闘して、その合間の息抜きとして、集英社より発売された漫画を読んだり。

アグリッパーAGRIPPAー 1 (ジャンプコミックス)

アグリッパーAGRIPPAー 1 (ジャンプコミックス)

まさか「ジャンプ」でローマ史漫画が連載されるとは…!快挙、と叫びたいです。ジャンプは最近はあまり読んでいませんでしたが、知らないうちにこんな漫画が連載されていたのですね。
舞台は紀元前52年のガリア、あのユリウス・カエサルガリアを完全に平定するかと思った矢先、ウェルキンゲトリクスを首謀者として全ガリアが蜂起、再び戦乱の幕が上がる…!といった時期ですね。なぜタイトルが「アグリッパ」なのかは、これから明らかにされるのでしょうか。


ところでこの『アグリッパ』は、作者である内水融氏の解説から推測するに、名前の読みや表現など、岩波文庫版『ガリア戦記』に近い解釈をとっているようです。僕の手元には今岩波文庫版『ガリア戦記』と、講談社学術文庫版『ガリア戦記』があります。

ガリア戦記 (岩波文庫 青407-1)

ガリア戦記 (岩波文庫 青407-1)

ガリア戦記 (講談社学術文庫)

ガリア戦記 (講談社学術文庫)

(他にも平凡社ライブラリー版や、PHP研究所版もあるようです)
岩波文庫版『ガリア戦記』に近い解釈であることは、作中第一話に登場するカルヌテス族の長の名前が「グトゥルアトゥス」であることからも推測できます。岩波文庫版『ガリア戦記』第七巻三章にその名前が登場します。


しかしながら講談社学術文庫版では何故か、第七巻三章に登場するカルヌテス族の長は「コトゥアトゥス」となっています。これはおそらく、二つの『ガリア戦記』がそれぞれ参照したラテン語原典(校訂本)の違いによるものと思われます。岩波文庫版が参照したのは1927年にドイツで出版された校訂本であり、他方講談社学術文庫版が参照したのは1964年にフランスで出版された校訂本と、1961年にドイツで出版された校訂本ということです。この参照した校訂本(底本)の違いのため、名前が微妙に異なっているのでしょう。現物にあたったわけではないので、確実ではないですが…今度図書館で確かめてみます。

研究者としては、内水氏が参考にしている資料を知りたい、と思ってしまうのでした。