「アンティオキアのヨハネス」
今5世紀の史料について調べなければいけなくて、いろいろと文献を漁っています。西洋古代史史料について、とりわけ今調べている5世紀の史料に関して日本語で読める文献を見つけることができなかったので、英語の文献をとりあえずあたっているところです。で、これまでも何度も参考にした文献が↓。
Greek and Roman Historiography in Late Antiquity: Fourth to Sixth Century, A.D
- 作者: Gabriele Marasco
- 出版社/メーカー: Brill Academic Pub
- 発売日: 2003/09/01
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログ (1件) を見る
4世紀以降の歴史書について扱った論文集で、先行研究をまとめつつ、現在刊行されている史料の刊本も紹介してくれているので非常に便利な本です。日本語でこういう書籍が出ないかなぁ。せっかくなので、各論文のタイトルと著者名を翻訳。
第1章「コンスタンティヌスの時代の歴史叙述」F.ウィンケルマン
第2章「アンミアヌス=マルケリヌス」G.サッバー
第3章「4世紀のラテン語略述史家」G.ボナメンテ
第4章「『ヒストリア=アウグスタ』と異教歴史叙述」A.R.バーリー
第5章「エウセビオスに続く教会史家」P.ヴァン.デューン
第6章「異教歴史叙述と帝国の衰退」W.リーベシュッツ
第7章「教会史家(1)ソクラテス、ソゾメノス、テオドレトス」H.レッピン
第8章「教会史家(2)フィロストロギオスとキュジコスのゲラシオス」G.マラスコ
第9章「ギリシア語歴史叙述の発展:プリスクス、マルクス、カンディドゥス」R.ブロックリー
第10章「ラテン語歴史叙述:ヒエロニムス、オロシウスと西部の年代記」G.ゼッキニ
第11章「ラテン語歴史叙述と蛮族諸王国」B.クローク
第12章「東部の歴史叙述」M.R.カタデッラ
第13章「教会史家とカルケドン」M.ホイットビー
第14章「ビザンツ年代記の起源:ヨハネス=マララス」E.ジェフリーズ
で、今回調べていたのは「アンティオキアのヨハネス(John of Antioch)」というギリシア語の歴史家。アンティオキアというのは現在のトルコはアンタキヤのことですが、彼が記した歴史書は実は断片でしか残っておらず、10世紀のビザンツ皇帝コンスタンティノス7世=ポルフュロゲネトスが編纂した(させた?)歴史書に抜粋が多いらしいです。彼が誰なのか調べるためにこの論文集を読んでいたのですが…なんと6世紀と7世紀初頭にアンティオキア出身であるヨハネスは複数名いるらしく、しかも当時すでに混同があったとのこと…これじゃ、どこまで自分が探している「アンティオキアのヨハネス」を確定できるのか、僕の浅学も相まって、暗雲がたちこめてきました。他にも取り寄せ中の論文があるので、そちらに期待したいところです。