アウレリウス・ウィクトル
4世紀以降ローマ帝国では、それまでのローマの歴史を簡潔に記した一連の歴史書が書かれるようになります。簡潔とはいえ、特に記録の残存状況が悪い3世紀から4世紀においては、そうした史料は不可欠で、貴重な記録でもあります。
そうした歴史書を記した人の一人に、アウレリウス・ウィクトルという人物がいます。彼の著作とされるのは『皇帝史 Liber de Caesaribus』で、アウグストゥスからコンスタンティウス2世までの皇帝たちの簡潔な伝記となっています。この史料は、元老院議員が軍事職に携わることを禁止したいわゆる「ガリエヌス勅令」の発布を伝えていたり、また著者であるウィクトルが「背教者」ユリアヌス時代に属州総督に任ぜられたこともあり、他の同じような歴史書よりも取り上げられる機会が多いような気がします。
日本語版ウィキペディアにも項目が立っていないほどのマイナーさ(という表現が良いのかはさておき…)で、この著者について調べる際には外語文献を調べないといけない情報が多かったのですが、この論文がすでに発表されていることを恥ずかしながらつい最近知りました。
井上文則「大帝国統治と教養 -一官僚のみたローマ帝国」南川高志編著『知と学びのヨーロッパ史 -人文学・人文主義の歴史的展開』ミネルヴァ書房、2007年、13-35頁。
論題の「一官僚」がアウレリウス・ウィクトルのことです。著作年代や著作意図など、研究に欠かせない情報がきちんと整理されていてすごく便利。もっと早くこの論文の存在に気付くべきでした。
余談ながら、論文検索にはたいていCiniiやMAGAZINEPLUSなどをもっぱら利用するのですが、雑誌論文ではなく、論文集に収録された論文はそこにはデータが無いので、気付くことができなかったという事情。上の論文は、同じ井上文則先生の著作を再度読んでいるときにその存在を知りました。
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