ヒエロニムス『年代記』におけるシルウァヌス反乱の年代
ヒエロニムス『年代記』のHelmによる校訂本では、通説では355年とされる軍団司令官シルウァヌスの反乱事件が354年に起こったとされており、僕が探した限りではこの問題に触れた先行研究は無かったので、調べて註を書きました。ヒエロニムス『年代記』には英語の翻訳と注釈書があるのですが、この箇所については並行史料を挙げてあるだけでした。
A Translation of Jerome's Chronicon With Historical Commentary
- 作者: Saint Jerome,Malcolm Drew Donalson
- 出版社/メーカー: Edwin Mellen Pr
- 発売日: 1996/06/01
- メディア: ハードカバー
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おそらくヒエロニムスが利用した資料にはシルウァヌス反乱の年代が明記されていないこと、そしてその資料では直前のガッルス処刑と絡めて記述され、ガッルス処刑が354年であることは資料から分かるということで、ヒエロニムスはシルウァヌスとガッルスの死を同年と考えたのだと思います。参考にしたのはR. W. Burgessによる『年代記』と『皇帝史』に関わる一連の研究です。その一部については以前にもこのブログでとりあげました(2011年3月19日記事)。その他には主に次の二本。
Jerome and the Kaisergeschite, Historia 44/3, 1995, 349-69.
A common source for Jerome, Eutropius, Festus, Ammianus, and the Epitome de Caesaribus between 358 and 378, along with further thoughts on the date and nature of the Kaisergeschichte, Classical Philology 100, 2005, 166-92.
で、これらのBurgessの一連の研究が今夏一冊にまとめられて出版されるようです。
- 作者: R.W. Burgess
- 出版社/メーカー: Routledge
- 発売日: 2011/07/28
- メディア: ハードカバー
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この本の出版が非常に楽しみです。