古代末期の簒奪者

地震前に研究室に届いてから図書館に登録に出されて、地震後いつの間にか戻ってきていた本。必読文献のようです。

Joachim Szidat, Usurpator tanti nominis, Kaiser und Usurpator in der Spätantike (337-476 n.Chr.)(Historia Einzelschriften Heft 210), Stuttgart, 2010.

ドイツ語です。頁数は458頁とまあ長い方ではありますが嘆息するほどではなく…と、感覚がおかしい気もしますが。ただ、章立てが非常に細かく分かれているので、読む前に構成をつかむためにも、目次だけ訳してみました。

目次

まえがき/注意書き
I. 序論 
I.1 簒奪と帝位交代.全般的考察 
I.2 研究における古代末期の簒奪 
I.3 本書の目的、内容と方法

II. 古代末期における反乱の認識
II. 1 反乱と類似の事例 
II. 2 概念 
II. 3 各皇帝における反乱の評価とその表れ 
II. 4 古代末期の政治理論における反乱
II. 5 皇帝と簒奪者との政治的対立

III. 皇帝
III. A.1 4世紀・5世紀における支配の形、支配の伝達と支配の保全 
III. A.2 共治帝の支配
III. A.3 共治帝支配の制度構造とその政治への影響 
III. A.4 支配権の放棄 
III. B 支配の相続
III. B.1 皇帝の昇格 
III. B.1.a 昇格の儀礼 
III. B.1.b 即位演説会あるいは「軍隊が皇帝を作る」.軍隊は皇帝を作るのか?
III. B.1.c 即位演説会の招集と指揮 
III. B.1.d 副帝の昇格 
III. B.2 昇格後 
III. B.2.a 全般的考察:昇格、支配の開始、承認の儀式 
III. B.2.b 昇格の場での新たな支配の承認
III. B.3 皇帝の死と新たな支配開始の合間
III. C 候補者の提案 
III. C.1 全般的考察 
III. C.2 新たな支配のauctorとしての皇帝 
III. C.3 首脳部とその候補者
III. C.3.a 4世紀における皇帝昇格 
III. C.3.b 5世紀と6世紀の東部における皇帝昇格
III. C.3.c 西部における皇帝昇格:ペトロニウス・マクシムスの昇格 
III. C.3.d 首脳部 
III. C.3.e 要約
III. D 新たに昇格した皇帝のその支配地と帝国における承認と証明 
III. D.1 全般的考察 
III. D.2 共同支配者の通達
III. D.3 重要集団による承認
III. E 誰が皇帝になるのか? 
III. E.1 王朝原理 
III. E.2 政治的・社会的条件:出自、身分、地位、信仰
III. F 支配の保全 
III. F.1 全般的考察 
III. F.2 首脳部と支配の保全 
III. F.3 中心外の兵士と官庁の構成員
III. F.4 都市の住民 
III. F.5 教会 
III. F.6 潜在的要求者に対する支配の保全

IV. 簒奪者
IV. A全般的考察 
IV. A.1支配への関与としての簒奪 
IV. A.2 皇帝のもとでの簒奪と暴力的対立
IV. A.3 簒奪への新たな可能性 
IV. A.4 簒奪の様々な形 
IV. A.5 簒奪の試みと暗殺計画
IV. A.6 簒奪の数.その年代上・地理上の分布
IV. B 簒奪の背景
IV. C 簒奪者による支配の相続 
IV. C.1 計画と手配 
IV. C.1.a 簒奪者と指導集団 
IV. C.1.b 軍事的基盤
IV. C.1.c 必要な財源の調達 
IV. C.2 簒奪者の昇格 
IV. C.2.a 昇格の儀式
IV. C.2.b 簒奪者の承認と昇格の場 
IV. C.3 誰が簒奪者を推薦するのか?候補者の決定
IV. D 誰が簒奪に成功できるのか? 
IV. D.1 全般的考察 
IV. D.2 軍司令官と民政の担当者
IV. E 簒奪者に苦しむ皇帝とその支持者 
IV. E.1 失脚した皇帝の運命 
IV. E.2 苦悩する、あるいは失脚した皇帝の支持者
IV. F 昇格後:簒奪者の他の道 
IV. F.1 全般的考察 
IV. F.2 領地の占有
IV. F.3 特に重要な二つの領地:アフリカとイリュリア 
IV. F.4 臣民に対する支配の正当化
IV. F.5 共同支配者によるみせかけの承認 
IV. F.6 簒奪者と決定的集団 
IV. F.7 独立した行政と首脳部の設立
IV. F.7.a 民政職の占有 
IV. F.7.b 簒奪者に仕えた元老院議員身分 
IV. F.7.c 軍事司令構造の設立
IV. F.8 独立した王朝の創始
IV. G 皇帝と簒奪者との対立 
IV. G.1 承認の交渉 
IV. G.2 軍事的対立
IV. H 廃位、処罰、死 
IV. H.1 簒奪者の処罰 
IV. H.2 支持者と親類の処罰 
IV. H.3 兵士と将校の処罰
IV. H.4 勝利した皇帝の凱旋

IV. I 5世紀における簒奪者と皇帝.帝国の危機、支配の伝達と支配保全に対するのその結果
IV. I.1 帝国の危機における皇帝と簒奪
IV. I.2 皇帝を生み出す将軍
IV. I.3 簒奪と蛮族

V. 総括の試み

VI. 補遺
A. 付論
1. ἡ σύγκλητος
2. 簒奪の試み
3. 457年4月1日マヨリアヌスの昇格
4. illustris
5. テオドシウス2世との協議の参加者.450年の継承
6. πορφυρογέννητος
7. プロコピウスと支配王朝の交替
B. 表
1. 年表
2. 284年から532年までの皇帝と簒奪に関する表
3. 簒奪年表
4. 文民経歴者による簒奪の表


長いですね(苦笑)あと、内容を読まずに章題だけ訳したので、間違いがたくさんあるはずですが、とりあえずということで。そもそも、Spätantikeというドイツ語を「古代末期」(英語ではLate Antiquity)と訳すことがすでに適切かどうかすら怪しいです。

目次から分かるように、後期ローマ帝国における簒奪について年代を追って叙述していくのではなく、テーマを設けて一つ一つを論じていく構成のようです。