Gwynn, The Eusebians

D. M. Gwynn, The Eusebians: The Polemic of Athanasius of Alexandria and the Construction of the ‘Arian Controversy’, Oxford Theological Monographs (Oxford: Oxford University Press, 2007)

目次
• Introduction
• PART I
1. The polemical writings of Athanasius: chronology and context
• PART II
2. Athanasius' earliest polemical work: the 'Eusebians' in the Epistula Encyclica of 339
3. The origin of the 'Eusebians' in the polemic of Athanasius
4. The influence of Athanasius' polemic 339-46
• PART III
5. Who were the 'Eusebians'?
6. The 'Eusebians' in action
7. The 'Arianism' of the 'Eusebians'
• Conclusion

貼り付け元 http://ci.nii.ac.jp/ncid/ba84805641

 2003年にオックスフォード大学に提出された博士論文をもとにした著作。後4世紀のアレクサンドリア司教アタナシオスは、後世のキリスト教史理解、キリスト教神学に絶大な影響を及ぼした。その一つの影響は、いわゆる「アレイオス論争」のわれわれの理解にみられる。キリスト理解をめぐって4世紀の教会を揺るがした「アレイオス論争」は、アタナシオスらニカイア主義を擁護する「正統派」と、「異端」たるアレイオスの主張を支持したニコメディア司教エウセビオスを中心とする「エウセビオスの党派」の二項対立という構図で理解されていた。近年の研究動向はこの二項対立的構図からの脱却を目指しており、「アレイオス派論争」を、「何が正統なのか」をめぐる、教会の試行錯誤の過程として解釈しなおしつつある。ところがそのような新たな研究動向においても、研究者たちはまるで「アレイオス主義」を支持した「エウセビオス派」なる集団が実在していたかのように考えている。これこそがアタナシオスの目論見であった。アタナシオスは、あたかも単一の「アレイオス派」=「エウセビオスの党派」が存在していたかのように論陣を張り、そうすることで自身の「正統性」を訴えようとしていたのである。本書はアタナシオスによる「エウセビオスの党派」なる言説が、論争のなかでいかにして構築されていったのかを明らかにするものである。