『タルムードの中のイエス』
死者65人に=邦人は十数人不明、負傷者も−損壊建物に100人か・NZ地震
日本からの留学生も多数被災されているとのことで、安否が心配です。いまだに連絡がとれない方が多いとのことですが、無事を祈っています。
さて、こんな本を読みました。
- 作者: ペーター・シェーファー,上村静,三浦望
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/11/17
- メディア: 単行本
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『タルムード』とはユダヤ教の文書であり、ヘブライ語で記述されています。僕はヘブライ語を習ったり勉強したことがないので、当然『タルムード』を直接読むことはできませんが…史料として『タルムード』を参照しなければならない時がないとも限らないので、予備知識だけでも、と思い読みました。352年にユダヤ人が反乱を起こした、という史料もありますので(アウレリウス=ウィクトル『皇帝伝』42章)。ただ、タルムードについて勉強するのなら、他にもたくさん入門書があるので、なんというか、考えなしに読んでしまったな、と反省…
とはいえ、素直に読み物として、非常に面白かったと思います。第8章や第9章で展開される、『タルムード』における文言と新約聖書との関連性、対応箇所の推測はとてもスリリングでした。また『タルムード』におけるローマ皇帝の描写についても触れている箇所があり、特に第8章で述べられる、『タルムード』における皇帝ティトゥスの描写には一見の価値ありです。ローマ史ではたいてい善帝として描かれることの多いティトゥスですが、ユダヤ戦争を指揮してエルサレムを陥落させただけあって、『タルムード』では大変な目にあっているようです。改めて、視点を変えて物事を見ることの大事さを思いました。
後期ローマ帝国におけるユダヤ人については近年も研究が進んでいるようですし、この本の著者であるシェーファー氏の論文を参照しなければならない時も来るかもしれません。日本では小田謙爾氏が「テオドシウス法典中のユダヤ人関係立法(史觀 125:40-53頁、1991年)」でシェーファー氏の論文を引用しています。